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てんかんの裏側で


ジェイミーがてんかんを起こした後の1週間は、

家庭崩壊なんて、

「健全な心」が保たれていなければすぐに起こるものなんだと

実感した時間だった。

犬の急変した姿に心が追いつかなかった私たちは、

犬の一挙手一投足を息を潜めて目で追う日が重なり、夜中も眠れない日々が続いた。

精神的にも、肉体的にも緊張と疲労で

私たちは、些細もないことで一触即発をしあった。

一つ一つの言葉にトゲが出て、

一つ一つの言動に文句が出た。

それは、私たち夫婦の間だけではなく、娘にも飛び火した。

隣りで娘が大きな声をあげている。

その声にビクつくジェイミーを見て「静かにしなさい」と声が出る。

数日前までは可愛い歌声、(『大きい声が出るようになったね〜』なんて微笑んでた。)

数日前までは愛おしいハグ、(『出来るだけたくさん抱きしめたい』って思っていた。)

数日前までは抱きしめたい「ママー」の声、(『なあに?』と答えるのが嬉しかった。)

でも、その全部が耳から聞こえなくなるか、

ノイズに聞こえるようになってしまった。

その代わり、

静かにしてなさい

あっちに行ってなさい

何度言ったら分かるの?

テレビ見ておとなしくしてなさい

どうしてご飯をこぼすの

食べ物で遊ばない!

数日前までは、たった一歳児の可愛かった成長やイタズラが

私の天敵のように思えるほど、世界が一変した。

もちろん、そんな私の反応に、娘は混乱していた。

今までしてきた行動が私の笑いを誘っていたはずなのに、

今、ママの顔は、しかめっ面になってる。

いや、ママはこれで笑っていたんだもの。

そう必死になって

彼女の行動は、わたしの目にはイタズラと写り

それは加速度を増した。そして、比例するように、私はより辟易した。

ネガティブスパイラル。

なかなか、てんかん発作の薬を飲まないジェイミーに

ストレスがマックスになり、わたしとアンドリューはまた喧嘩した。

『こうやったらいいよ』

『じゃあ、自分でやってよ』

『薬を人間が食べる器に置かないで!』

『洗えば大丈夫だよ』

そんなたわいもない事でお互いに苛つき、声が大きくなっていった。

ハッとして、

娘にふと目をやると、一人で本を読んでいた。

そして、いつもお風呂で一緒に歌う歌を歌っていた。

彼女なりにこの状況をどうにかして過ごそうとしてるようだった。

胸が痛い。

でも、どうしようもない自分の余裕のなさに私は耐えられず、

一人で、二階に上がり、動物病院で働いてた友人に連絡を取った。

「今起きていることは、全部、私たちの成長のために起きてることだから。

 絶対に自分を責めないって約束して」

そう彼女が言った。

それを聞いて、私は、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった。

すると、

『ママーママー』と階段を必死に上がってくる娘が聞こえる。

小さなカラダで階段を一生懸命に登ってきた。

そして、私の足にまとわりつきながら、ママーママーと呼ぶ。

もう、何やってるんだろう、わたし。

ただ、ジェイミーのことが心配なだけなのに。

なんで、こんなに家族がバラバラになっちゃうんだろう。

ふと時計を見ると、12時を過ぎていた。13時には犬を神経科に連れていく予定だ。

顔を洗って、黙って、アンドリューを無視したまま、

一階に戻りお昼を用意すると、アンドリューが近くに寄ってきた。

『謝りたいんだが、今伝えていいタイミングかな?』と。

こういう時の彼の素直なアプローチに、

私は何度救われてきただろうか。

『喧嘩をしたくないんだ』

そういう彼の方を見た。

今まで犬のジェイミーの動向ばかりを追っていたが、

久しぶりにその目を彼に向けると、彼の目の下にはクマがあった。

そして彼の瞳に映る私もまた、疲れた顔をしてた。

目が会った瞬間、ふと二人で笑みが溢れた。

『二人で一緒に乗り越えていこう。大丈夫だから。』

そういう彼に、私は、うなずき泣けてきた。

娘は嬉しそうにその私たちの顔を見ていた。

だからと言って、丸く収まるなんて訳が無い。

同じことは繰り返される。

余裕がなくなり、イラつき、相手に当たり、娘に当たり、

自分が嫌になって、泣く。

いつまでこのパターンを繰り返すのだ?

こういう風に、一つの状況に対して、

激しく反応が出て、同じパターンを繰り返すのには、

私の中に刺激されて嫌なものがあるから。

泣いたって、喚いたって、誰かが助けてくれるわけじゃない。

二人で乗り越えようにも、

私が、このパターンでいたら、前に進めない。

それに気付きながらも、その晩、娘が食べ物を床に落としたという、

1歳児がする当たり前のことに、ブチギレて、

『もうやだ!!!!』と叫んで、壁をドン!!と蹴った。

その蹴った音に自分で

ハッとして、これは、本当に私、ギリギリだわ。。。。と、情けなくなった。

すぐに

私はインテグレイティッド・ヒーリング(IH)の仲間であり、

IHのサンディエゴのコースの通訳を担当してくれているまいちゃんにセッションをお願いした。

自分一人で解決の問題じゃないな、これは、、、と思ったから。

誰かのエネルギーがそこに介在してもらう必要があった。

その直感は正しかった。

続く

モノクロから虹色へ

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