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パパが帰ってこない日

今年のアンドリューの気合の入れようは、付き合って初めて見る姿だった。


クリスマスを祝わない彼が


娘を連れて、クリスマス用の木を買いに出かけ

オーナメントに数万円をつぎ込み

クリスマスライトを鼻歌を歌いながら飾り付け

クリスマスツリーの下にたくさんのプレゼントを包んで置いていた。





私、初めてもらったクリスマスプレゼント、ブランケットですけど。

しかもコスコで買ったやつ。

しかもその後、犬のために使われたやつ。


ま、こんな風に男を変えるのは、妻ではなく、娘だったか、、、と言いながら

私は毎日キラキラ輝くクリスマスツリーに心を躍らせた。


日に日に娘たちへのプレゼントがクリスマスツリーの下に重ねられ

いよいよ明日はクリスマス・イブである。


ところがどっこい、昨日の晩、アンドリューから連絡があった。


『コロナの患者さんを見た』と言うことだった。


そんなもん、病院で働いているから何度も聞いていたし

定期的に受けているコロナのテストで陰性だったから、

大丈夫だろうと思っていた。


それが、『ホテルを借りて、今晩はそこに泊まろうと思う』と言うのだ。


ええええームッチャ大袈裟やん。

って言うか、私一人で大変やん。


まだまだ赤ちゃんは夜中2時間おき、大変な時は1時間おきで目が覚める。

その間、ずっと乳は出しっぱなしの、吸われっぱなしだ。


なんとか彼女が起きる4時か5時に赤ちゃんをアンドリューにバトンタッチして

私は、開放されて寝る。6時になり、長女が目を覚まし、また『まま、おっぱい』と言う声で

Tシャツの裾をめくり、乳を出し吸われながら意識が飛ぶ。


7時ぐらいになって、『いっぱい飲んだ』と言う娘は一階のアンドリューのところへ遊びに行く。

ここから8時までが私の熟睡時間だ。

出がらしのおっぱいをエチケットとしてTシャツの中に納め、

ああああああーーーーーと言いながら、伸びをして、眠る。


多分、熟睡できているこの1時間で私の体力はもっているもんだ。


それがアンドリューがホテル住まいとなると、、、、睡眠時間ないやん。


アンドリューまた大袈裟なこと、言ってるんだろう。


そう思っていた。


アンドリューがいない朝は、本当に大変だ。

娘たちの愛情を求める場所が私のみになる。


泣き声がけたたましく、東と西で聞こえる。

右往左往しながら、

『私は、あんたたちの奴隷じゃないんだからね!』と最後に叫ぶ私。


すると東軍と西軍がそろそろと私に近づいてくる。


『頼むよ。力合わせていくよ』


そんな風にして過ごした朝だった。


娘たちを公園に下ろしてすぐにアンドリューに電話をすると、

家に荷物を取りに行きたいと言う。


話を聞いてみると、


『小さな独房のような場所にコロナの陽性反応がある患者さんを2時間つきっきりで見る必要があっ た。


マスクをとって、水を飲んだり、電話をしたりする必要がある中で、

彼はその部屋をさることができずずっといたのだと言う。


もちろん、コロナ対策の防具を着てマスクをしてフェイスシールドもしていた。

対策はもちろんした。

でも、考えてみて欲しい。


コロナの患者さんと2時間ずっと一緒に小さな部屋に隔離されて過ごした後

君は、その体で本当に100%大丈夫だと言って小さな赤ちゃんの横になんの構いもなく寝れるか?


昨日も、手術が終わって、酸素マスクをつける必要がある患者さんは

もう酸素の呼吸器がないからと、ICUに入れず普通の部屋で呼吸器なしで過ごさせられたんだ。


目の前でコロナで死んでいく人も何人も見た。

これはリアルなんだよ。


だから、このウィルスを持って帰宅は僕はできないよ。


家族の安全が僕にとっては一番大事なのだから。』




そう話した。


親友が言った。


僕はコロナのワクチンは打てないんだ。呼吸器が弱くて、ぜんそくを持っているから。


だからコロナのワクチンを打つと、僕はアレルギー反応を起こして死んじゃうんだ。


つまり、コロナにかかることもできないし、ワクチンを打つこともできない。


君はコロナのワクチンに大反対だけど、僕がコロナにかかったら、命の危険を感じてるんだよ。




その親友と今晩クリスマスライトショーを見る約束をしていた。


当然、アンドリューはそのライトショーもキャンセルすることになった。


私たちだけでいくのか、、、


明日はクリスマスイブ。

みんなでツリーの前でいろんな話をしようって言ってた。

家の中の暖炉に薪をくべながら。


翌日のクリスマスは、長女にとって意識がある中での初めてのクリスマス。

彼女がプレゼントを開ける表情を私たち夫婦は二人で見ることがとても楽しみだった。



でも、コロナの潜伏期間があるから、クリスマス明けまでコロナのテストを受けれない。


『コロナのやつ』

そんな怒りと同時に、一緒に過ごすことができない悲しさがこみ上げてきた。



『アンドリューが1週間ぐらい一人になる休みが欲しいなんて、言葉にしたから

 こんなことになったんだ』


私はそんな皮肉を言った。


でも最近、私たちの間で発した言葉が現実化していくスピードがあまりにも早くて

言葉に気をつけようねと話していたばかりだった。


『子供たちと一緒に寝れない、一緒にお風呂に入れない、抱っこもできない。

 それがこんなに辛いとは思わなかった。

 1週間ぐらい休みが欲しいなんて、本当に思って言ったわけじゃなかったんだけどな。』


そう言ったアンドリュー。


私の中で次の質問がよぎった。

『これで、アンドリューが症状なしのコロナ陽性だったらどうするの?』

でも、それは、なんだか怖くて聞けなかった。


とにかく26日にテストを受けて結果がすぐに出るだろうから

そこで私たちの年末年始が決まるのだろう。



私には全く関係ないと思っていたコロナ。

こんな風に私の生活に入ってくるなんて、思いもしなかった。


長女が家中を探しながら言った。

『パパ、どこだ?パパ、お仕事に行ったのかなあ』


その声があまりにも純粋すぎて

私は胸が痛かった。


パパがいないベッドで寝ること。

パパがいないベッドで目が覚めること。


なんて寂しいのだろうか。


アンドリューのことが大好きで

当たり前すぎる毎日がこんなにも貴重だったとは。



この寂しさは、クリスマスだからこんな気持ちになるのだろうか。


でも、こんな年もあったよね。

そう言えるように、ムッチャ楽しんでみようかと思う。

どうやって?はまだ思いつかないけど。


ま、ここからが私の力の見せ所。

だって、幸いにもコロナにかかって重症な状態ではないのだから。


お疲れ様です。世の中の医療従事者の方々!

そして、アンドリュー、第一線で頑張ってくれて、ありがとう。



モノクロから虹色へ























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