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コロナの患者さん

今日、スーパーに買い物に行ったら、

『あなたのエコバッグは、今は禁止なの。 

 悪いけど、あなたのエコバッグを触ることすら禁止されているから、

 持って行ってくれないかしら?』

とレジのおばさんが言った。

『おっけー』というと

私のエコバッグがあったところを念入りにスプレーをし始めた。

そのスプレーが私の野菜に吹きかかっているのを見ながら、

なんか切ないなあと感じていた。

お金を支払う時に、キャッシュを渡すと彼女は私をにらんだ。

『現金ほど汚いものは、ないのよ。 知らないの?

 ほとんどの人が、今はクレジットカードで支払いをしているの。

 本当に気が利かない人ね』

と。

彼女は、色々な人に晒された状態の中で働くのだから

ここまで気をつけるのも無理はないと思いつつ、

小学生の時に、『〇〇菌』とあだ名をつけられていじめられていた子の気分だった。

みんながピリピリしている中で、

まあ、仕方がないか、、、、と思いつつ、

その扱われ方に、私の心を少し重くした。

そんな中、

病院で働く親友から、連絡が来た。

『今から、コロナの患者さんのケアをしてくるんだ』

親友が病院で働くから、そういう患者さんに会うのは分かっていたけど、

やはり、少し恐怖心が心の中に浮かぶものだ。

『神様、どうか彼を守ってください』

そうお願いをして、私は娘を昼寝につかせた。

病院では、宇宙飛行士のような格好をして自分を守るらしい。

そして、その患者さんにあった後は、シャワーを浴びたという。

仕事から戻ってきた彼から連絡があった。

『今日さ、学んだことがあるんだ』

『へえ、何を学んだの?』

『今日、コロナの患者さんが来ただろう?

 彼はさ、まだすごく若くて、全くコロナの症状も出ていなかったんだ。

 盲腸で手術に来たんだけどさ、コロナって聞いてショックだったみたい。』

『どうやって分かったの?』

『ああ、もう病院に来る人はすぐに検査で10分後にはコロナかどうかわかるんだ。』

『へえ、そうなんだ。じゃあ、本人も盲腸の手術だと思ったら、その上自分がコロナにかかっているって思ってショックだっただろうね。』

『ああ、そのショックだけじゃなくてさ、彼自身もすごい服を着せられて、

 その服の中で呼吸が回るようになっているんだ

 だから、外の空気に接触することがないようにね。』

『へえ、、、そうなんだね。まあ、安全のためにってところだよね。

 で、何を学んだの?』

『彼が来る前にやっぱりたくさんのプロトコルがあって、

 やるべきことが一杯なんだ。

 つまり、彼がコロナ患者っていうことで、全てのドラマが始まるっていうかさ。

 大切なことなんだけどね。

 で、彼を見たときにさ、彼を「コロナの患者」って見るのは、

 ちょっと違うかもしれないって思ったんだよ。

 彼は「コロナの患者」の前に「人間」なんだよなって思ってさ。

 1時間半、彼のケアに当たったんだけど、

 まず彼に、僕はこんなマスクと宇宙服みたいなのを来て、ここにいるけど、

 この宇宙服の中では、彼のことをちゃんとケアしているって思っていることを、

 知ってほしくて、まずは彼に話したんだ。

 ” I am so sorry that you have been going through and it must be really hard for you "

 って。』

そんな話を聞きながら、

ふと小学生の時にまなんだ社会の授業で、

公害によって水俣病になり隔離された人のエピソードを思い出した。

でも、こういうことってよくやってしまうこと。

あの人は、人の話を聞かないから

あの人は、無駄遣いする人だから

あの人は、かわいそうな人だから

あの人は、根性が曲がっているから

あの人は、ドケチだから

あの人は、嘘つきだから

あの人は、高飛車だから

あの人は、、、、

そうやって、ラベルをつけて、

自分と同じ一人の人間として見ることをやめてしまう。

その人の傷からくるメンドくさいパターンに、

目を奪われて目を合わせることをやめてしまう。。

その人をどう扱うかということに、頭を使って、

その人の心を見ることを忘れてしまう。。

その人をどう見ているかということに、口を使って、

その人をけなすことに一生懸命になってしまう。

彼の姿勢から、とても深い学びを私自身も得た気がする。

ある有名な彫刻家の話を思い出す。

『その頑丈な石の中に、天使がいるのを見えるかい? 

 僕のしている作業は、頑丈な石を取り払って、

 みんなが見えないけど僕には見えている天使を外に出してあげることなのさ。』

あのレジのおばさんの言動に心を重くさせるんじゃなくて、

『いろんな人に晒される中で、一生懸命に働いてくれてありがとう。

 ごめんね、気が利かなくて。』

って言えばよかったな。

そう思いながら眠りについた。

モノクロから虹色へ

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