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命を使って譲る愛

娘が生まれた晩、

寝ていた犬のジェイミーがむっくりと起き上がって私の周りをウロウロとしていた。

てんかんが始まってから

色々と波があったものの

薬はもう要らないと彼女からメッセージがあったので止めることにした。

てんかんは、薬を飲まないと何度も発症して

脳の細胞を変えていくらしい。

でも、ジェイミーは薬をやめても、てんかんはもう発症しなかった。

ただ、脳の神経にダメージがあるようで、ぐるぐると左回りをしたり

落ち着きなく歩き回ったり、そこら中でおしっことうんちをしてしまったり、

名前を呼んでもどこから声がするのか分からなかったり、聞こえなかったり、

また、1日の大半をずっと寝ていることが多くなった。

そんなジェイミーが出産を終えたばかりの私のところに

起き上がってやってきた。

見えていないのは嘘じゃないか?と思うぐらい

彼女は私の匂いがわかるようだった。

長女と赤ちゃんに気を奪われていた私は、

『ジェミー』と一声かけて、たった今生まれたばかりの赤ちゃんにおっぱいをあげることに気を向けていた。

出産を終え、二階に上がり、布団でゆっくりに入った時には夜がうっすら明けていた。

出産で体力を消耗した私はウトウトしながら昼寝をしていた時

アンドリューが

『ジェイミーが見つからないんだ。

 おしっこのためにジェイミーを裏庭に出しておいたんだけど

 見当たらないんだ。

 この家に3年住んでいるけど、そんなこと一度もしたことがなかったのに。』

そう言って焦って私に伝えてきた。

すぐに私はベッドで寝ながら、筋肉反射テストを使ってジェイミーの場所を調べた。

(すぐ近くにいる。大丈夫。)

彼女のエネルギーをしっかりと感じることができた。

『大丈夫よ。すぐに見つかるわ』

そう言って、焦って探しに出て行ったアンドリューの背中をベッドから眺めていた。

私は今まで何度も筋肉反射テストで探し物を見つけることができていた。

東京ドームぐらいの大きさの公園でなくした車の鍵を

筋肉反射テストで見つけたこともある。

そんな経験から、

筋肉反射テストでジェイミーも見つかると思っていた。

ご飯を届けにきてくれた舞ちゃんもチェックしてくれた。

彼女もインテグレイティド・ヒーリングの仲間で

筋肉反射テストを使う仲間だ。

その私たち二人ともが同じところに反応を感じていた。

大丈夫、大丈夫。

私にはジェイミーのエネルギーを感じれていたから、大丈夫だと信じて疑わなかったが

そのテストとは裏腹にジェイミーは一向に出てこなかった。

見つからない。

5日ぐらい経って、さすがに35度以上の猛暑が続いていたため、

私は心配になってきた。

ジェイミー

お水を飲めているだろうか?

誰かがご飯をくれているだろうか?

そうして7日が過ぎた。

その間、何度もアンドリューはいろんな家のドアを叩いて

庭に入れてもらいジェイミーを探した。

チラシも作って貼りまくった。

筋肉反射テストを使いながら、友達も一緒に探してくれた。

私自身もさすがに心配になり、出産直後のカラダを引きずりながら探した。

絶対に近くにいる。

でも、ジェイミーは出てこなかった。

出てこない選択をしてる感じだった。

そして、赤ちゃんが生まれた1週間後の長女の誕生日の日。

アンドリューは朝、私と赤ちゃんを家に置いて、

まず長女を公園にドロップオフしに行った。

家には私と赤ちゃんだけ。

2歳の長女がいない家は、シーンとしている。

すると、家の至るところからジェイミーの足音と息遣いが聞こえた。

ハッハッと舌べろを出しながら歩き回るジェイミー。

床にカツンカツンと小さくなるジェイミーの爪音。

私は赤ちゃんをだきながら、ようやくジェイミー帰ってきたんだなと思い

『ジェイミー』と一階に降りて行った。

私が一階に降りると、そこには静けさ以外の何物もなく、シーンとしていた。

ジェイミー?

ジェイミー?どこ???

どこにいるの?

赤ちゃんを抱きながら、いつも彼女が隠れるソファーの下をみる。

姿は見えない。。。。。

もしかして、、、、そう思い、私は筋肉反射テストを使ってジェイミーに交信をした。

昨日までそこに確実にあった彼女のエネルギーはなくなっていた。

何度も確認する。

でも、何度もそこにあったものがなくなっていた。

『嘘よ、うそよ!!!

 ジェイミー、ジェイミー、ジェイミーーー!!どこ!!!

 出てきなさい!!!!』

そう泣き叫ぶが、私の声は虚しくこだますだけだった。

そんな中、アンドリューが帰宅した。

『what's up?』と言うアンドリューに

『アンドリュー、伝えたいことがあるんだけど』

私は震えた唇で伝えた。

『あのね、ジェイミー死んじゃった。いなくなっちゃったよ。

 もうね、交信が取れない。

 彼女のエネルギーがない。

 さっきね、ジェイミーはバイバイを言いきにきたよ。

 もう、いないよ。

 もう、会えないよ。

 もう、ジェイミー帰ってこないよ!!』

そう私が喉仏の熱さを殺しながら伝えた途端に

アンドリューの顔がグシャグシャになって、

子供のようにワンワン彼が泣いた。

カーペットに膝まづいて、鼻水を垂らしながらワンワン泣いた。

自分の父親が死んだ時も泣かなかったアンドリューが泣いてた。

ジェイミージェイミー

そう二人で名前を呼びながら、泣いて泣いて泣いた。

アンドリューがポツリポツリと話し始めた。

アンドリューがジェイミーをレスキューする前

彼の女性関係の人生はめちゃくちゃだった。

ジェイミーを保護して飼い始めた時、ドッグトレーナーに言われたんだという。

『あなたは、今、この無力な女性を助けようとする人生が始まったのね』と。

そこからアンドリューの人生は変わったと話してくれた。

一人の友人からタイミングよく電話がきて教えてくれた。

『ジェイミーがね、長女が生まれたときに、

 ハイエラキーが変わったって。

 自分の今までいた座は、長女に譲らないといけないと思った。

 そして、今、次女が生まれて、自分が生きていたら迷惑になる。

 そして命の誕生を大いに祝って欲しい。味わって欲しい。

 だから、自分の居場所を次女に渡して、私は消えるよ。

 命の誕生に心を使って欲しいから、

 死の経験に心を使って欲しくないから、私は消えるよ。

 いつまでも見守っているよ。』

そうメッセージが来たよと。

本当か嘘かなんてわからない。

でも、なんだか、納得ができた。

ジェイミーらしい。

そして、私も、ジェイミーからメッセージがあるかを聞いた。

そしたら、インナーチャイルドの『マザー』のカードが出てきた。

(私がジェイミーの母として足りなかったのかな?

 彼女のインナーチャイルドを傷つけちゃったかな?)

誰かが死ぬと、大抵自分ができなかったこと、申し訳なく思うことの方が

先に浮かび上がってしまう。

その人と一緒にいた喜びの時間よりも。

でも、最後に彼女からのメッセージは、

その私の感覚を大きく愛の方へ方向転換してくれた。

(私は、あなたの母です。

 あなたを無条件に愛し、あなたを信じています。

 あなたにいつも愛を送っています。)+

そんなメッセージだった。

ああ、そうか。

私がジェイミーの母だったのではなく、

ジェイミーが私の母として私をいつも見守ってくれていたのだ。大きな愛で。

そのカードを握りながら、改めて私は泣いた。

その愛の大きさに。

アンドリューが言った。

ジェイミーは陣痛の間、ずっと私の横にいてカラダにピタッとくっついて

私をサポートしていたよと。

こんな時にあなたのことを構えないよ。。。

そんな風に思っていたけど、違った。

彼女は私のことをサポートしてくれていたんだ。

そこにいて、見守る。

そんな大きな母の愛を示してくれた。

涙を拭いて、私たちは、長女のバースデーパーティーに向かった。

死を感謝とともに感じ、

ジェイミーの愛と一緒に、長女の2歳の誕生日を祝うために。

赤ちゃんが生まれた日にこの家をさり、

長女の誕生日にこの世を去ったジェイミー。

ありがとう。

それでもね、

やっぱり、まだ私たちはあなたが家に帰ってくるんじゃないかと

毎日あなたの姿を探してる。

モノクロから虹色へ

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