Daddy's Day


ロサンゼルスからサンディエゴへ向かう帰り道、

運転をしながら父親に電話をしました。

母親は出かけていた様で、父がちょうどよく出ました。

『おとうさん、ハッピー父の日』

そう言うと

『ハロー』と調子のいい感じの父の声。

たわいもない話をして少し経った後、

『この間、とっても悲しい事がいず美のカラダにあったね。

 一緒に悲しもうと思うよ』

流産をして一ヶ月経つ私の生活は、体力も気力ももとに戻り

クライアントさんも毎日大盛況で入ってくれて

愛される旦那さんと犬に囲まれ、大好きな友達とも大切な時間を過ごして

申し分ない生活を過ごしていました。

そこに、この父親のひと言。

一瞬にして、のど仏が熱くなり、

涙で少しいつもよりもゆっくりのスピードで車を走らせた方が良さそうだ。

一緒に悲しもうと思うよ、、、、か。

『アンドリュー君は、大丈夫だったかな?』

そう聞く父に

『うん、

 凄い悲しんでいたけどちゃんと私のサポートをしてお墓とかも作ってくれたよ』

そう言うと

『アンドリューくんらしいなあ』との声。

そんな彼の優しさが、私にはとってもココロにぐんぐんと染みて来て

話題を変える事にした。

『なんかね、太らないといけないって言われてね。

 今、頑張って太ろうとしているの。変なものを食べて太るって簡単だけど

 私は良質の脂身を作ろうと思ってね。

 脂って、凄く体力を作ってくれるしさ、人間ほとんど脂で出来ている様なものだし』

そう言うと

『まあ、いず美が言う事ならそうなんだろう』

このパーフェクトな信頼。

いつも父はそうだった。

駅伝の選手に選ばれた時も、持久走大会の前日の夜も

『いず美がそう思うなら、そうしてみたら良い』

そう言っていた。

私がのびのびと育ったのは彼の100%の信頼とサポートのお陰だと思う。

それに気付いたのは私の兄の第一子が生まれたときだった。

いつも義姉の元にいた第一子がなかなか父に寄り付かなかった。

すぐに抱っこをしたくなる。

無理矢理にでも膝の上に乗せたくなるせっかちな私とは反対に

父は、義姉から孫の面倒を頼まれると、孫がいたい場所にいさせていた。

新聞を床に拡げて読む父。

その反対側に座る孫。

決して「こっちへ来なさい」とも言わない。

そんな様子が何日続いただろうか。

いつのまにか、孫は、

父の反対側にいた所から徐々に彼のそばによって一緒に新聞を覗く様になった。

読める訳がない。

ただ、父の出方を見ていると言う感じだった。

ある日の日曜日、私がふと居間を見ると、

孫は父の膝の上にのっかって新聞を一緒に眺めていた。

絶対に相手の意思を尊重し、いつでもサポートする体勢でいる父の凄さを見せられた瞬間だった。

それを思い出し、

『ねえ、私が赤ちゃん生んだら、絶対にアメリカに来て

 赤ちゃん抱っこしてよね』

そう言うと

『うん、お母さんと二人で飛んでいくよ』

そう言った。

80歳のじいさんが、時差を越えて飛行機に乗って慣れない土地で知らない単語を話す場所に孫を見に来るという。

色々な人が色々な家庭環境で『愛』の形を学ぶと思う。

私にとって愛を感じるときは

『あなたにそばにいて欲しい』

そう言った時に、そこに存在してくれる事だ。

小学生のときも、中学生のときも、駅伝の選手でトップを争っているときも、

父が後ろからスクーターでついて来てくれた。

市の陸上記録会、バスケの県大会、バトンの全国大会、ダンスの大会、

ダンスの講演会、ピアノの発表会、ディナーショーなど

いつも観客の中に父の姿があった。

いつも一緒に私の人生を付き添ってくれている感じがした。

そして、大人になった今、流産をしたの事を、『一緒に悲しもうと思うよ』

そう父は言った。

彼が教えてくれた事は、明るい所にいるときでも、暗闇の中にいるときでも

より素晴らしい所に連れて行ってくれる訳ではない。

特に暗闇にいる時に、明るい所へと連れて行くのではなく、

暗闇の中、隣りに座って、私がお尻を上げるのを待っていてくれる。

一緒に悲しもうと思うよ。

『お父さん、本当にありがとうね。私のお父さんでいてくれて。』

そう言って電話を切った。

彼の優しさが身にしみて、電話を切った後も涙が止まらなかった。

大人になって完璧ではなかった父の姿も知る事もあった。

それでも、私は父を尊敬して止まない。

この人のお陰で私は、人生を満喫する事が出来ているから。

お父さん、ありがとう。

ハッピーファーザーズデー

モノクロから虹色へ

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