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感情を抑えず伝える前に まずアドレスするということ

1 時間前
読了時間: 7分

感情は、表現すればいいものでも、抑え込めばいいものでもない。


怒りをそのままぶつけると、関係はこじれる。

悲しさや怖さを飲み込み続けると、自分の中にしこりが残る。

では、どうすればいいのか。


私がいま大事だと思っているのは、感情をアドレスするということだ。


感情的に振る舞うのではなく、感情をなかったことにするのでもない。

自分の中に起きている感情に気づき、その感情が何を守ろうとしているのかを理解する。

その上で、相手を敵ではなく、協力できる存在として扱う。


この順番が抜けると、感情はすぐに人間関係を支配する。



感情を表現することと感情をアドレスすることは違う


感情を学び始めると、多くの人がどちらかに振れやすい。


これまで感情を抑えてきた人は、こう思う。


「ちゃんと感情を伝えなきゃ」

「嫌だったと言わなきゃ」

「我慢しない自分にならなきゃ」


一方で、感情的になりやすかった人は、こう思う。


「もっとコントロールしなきゃ」

「怒らないようにしなきゃ」

「落ち着いた人にならなきゃ」


どちらも自然な反応だと思う。

感情に振り回されてきた経験があるほど、次は反対側に行きたくなる。


でも、感情をそのまま出すことと、感情を大切に扱うことは同じではない。

感情を抑えることと、感情を整えることも同じではない。


感情をアドレスするとは、たとえばこういうことだ。


  • いま何を感じているのかに気づく

  • その感情が何を恐れているのかを聞く

  • 自分は本当は何を望んでいるのかを見つける

  • 相手に攻撃ではなく要請として伝える


ここで大事なのは、感情を「正しい」「間違っている」で裁かないことだ。


怒っているなら、怒っている。

怖いなら、怖い。

悲しいなら、悲しい。


まずはそれを認める。そこから、感情の奥にある意味を見ていく。


感情的になると周りが敵に見えやすくなる


感情が強く動いているとき、人は相手を敵認定しやすい。


相手が普通に質問しただけでも、責められたように感じる。

助けようとしてくれている言葉も、否定されたように聞こえる。

「大丈夫?」という一言さえ、「大丈夫じゃないって言ってるでしょ」と受け取りたくなる。


このとき、問題は相手の言葉だけではない。

自分の中で、すでに世界の見え方が変わっている。


相手は味方ではない。

わかってくれない。

信じてくれない。

きっと責めてくる。


そんな前提が心の中にあると、会話は始まる前から防衛になる。


防衛の状態では、相手と協力することが難しい。

なぜなら、協力するためには、少なくとも「この人は自分を傷つけようとしているわけではないかもしれない」という余白が必要だからだ。


感情をアドレスすることは、この余白を取り戻す作業でもある。


「私は怒っている。だから相手が敵に見えているのかもしれない」

「私は怖い。だから行動が止まっているのかもしれない」

「私は悲しい。だから何を言われても拒絶されたように感じるのかもしれない」


こうやって感情を見つめると、相手をすぐに敵にしなくて済む。



娘の「言えない」の奥にあったもの


昨日、次女が家中を探し回っていた。


学校の先生から、ピンクのファイルを家から持ってくるように言われたらしい。でも、どこを探しても見つからない。


しばらくして、次女が必死な顔で言った。


「お母さん、先生に言って。家中を探したけどなかったって、先生に伝えて」


私は一瞬、頭の中で思った。


自分で言えないなんてことはないだろう。

自分で言うべきじゃないか。


親としては、そう言いたくなる。

自分のことは自分で伝えてほしい。

先生に説明する練習にもなる。

そう考えるのは、たぶん間違いではない。


けれど、その前に聞いてみた。


「どんな気持ちになっているの?」


すると次女は言った。


「こわい」


そこで、もう一つ聞いた。


「何が起きると思うから、こわいの?」


次女は答えた。


「私が伝えたら、信じてもらえない」


その瞬間、見え方が変わった。


次女は、ただ面倒くさがっていたわけではなかった。

自分で言う力がないわけでもなかった。

先生を責めていたわけでもない。


ただ、怖かった。

そして、その怖さの中では、先生は「わかってくれる人」ではなく、「信じてくれないかもしれない人」になっていた。


だから行動が止まっていた。


ここで私が「自分で言いなさい」と押したら、次女はもっと孤立したかもしれない。

「先生はそんな人じゃないでしょ」と言えば、次女の怖さを否定することになったかもしれない。


必要だったのは、まず感情を理解することだった。


感情を理解すると行動の意味が変わる


同じ行動でも、感情を見ないまま判断すると、まったく別の意味に見える。


感情を見ないとき

感情を見たあと

「自分で言うべきことを避けている」

「信じてもらえない怖さで動けなくなっている」


この違いは大きい。


前者で見ると、こちらは正論を言いたくなる。

後者で見ると、こちらは支え方を考えられる。


もちろん、いつでも親が代わりに言えばいいわけではない。

子どもが自分で伝える経験は大事だ。

でも、その経験は「突き放されること」と同じではない。


たとえば、こういう関わり方ができる。


「一緒にどう伝えるか考えよう」

「最初の一言だけ練習してみよう」

「どうしても不安なら、お母さんも状況を少し伝えるね」


こうすると、子どもは「自分一人で敵に向かわなきゃいけない」と感じなくて済む。


相手と戦うのではなく、相手と協力する方向に戻れる。


これは子どもだけの話ではない。大人同士でも同じだ。


パートナーに不満を言うとき。

職場で困っていることを相談するとき。

友人に寂しかったと伝えるとき。


感情をアドレスしないまま話すと、言葉は攻撃になりやすい。


「なんでわかってくれないの」

「普通こうするでしょ」

「あなたはいつもそう」


でも、自分の感情を理解した上で話すと、言葉は要請に変わる。


「私は不安になっていた」

「確認できると安心する」

「次からこうしてもらえると助かる」


これは弱くなることではない。

むしろ、自分の感情に責任を持つ強さだと思う。



相手を仲間として扱うためにできること


感情が強いときほど、相手を仲間として見るのは難しい。

だからこそ、いきなり上手に話そうとしなくていい。


まずは、自分の中で短く確認する。


私はいま何を感じているのか。


怒りなのか。

怖さなのか。

悲しさなのか。

恥ずかしさなのか。

不安なのか。


次に、その感情に聞いてみる。


私は何が起きると思っているのか。


責められると思っている。

信じてもらえないと思っている。

見捨てられると思っている。

迷惑だと思われる気がしている。


ここまで見えると、感情の正体が少しはっきりする。


そして最後に、こう問い直す。


相手に何をお願いしたいのか。


わかってほしい。

一緒に確認してほしい。

少し待ってほしい。

次から先に知らせてほしい。

信じて話を聞いてほしい。


感情を伝えるときに大切なのは、相手を責めることではなく、関係の中で必要なものを差し出すことだと思う。


「私はこう感じた。だから、こうしてほしい」


この形になると、相手も受け取りやすい。

もちろん、相手が必ず望み通りに応えてくれるとは限らない。

それでも、少なくともこちらは、相手を敵ではなく対話の相手として扱っている。


その姿勢は、関係を壊さない。


感情は厄介なものではなく案内役になる


感情は、ときどき厄介だ。

急に湧き上がるし、理屈では止まらないし、あとから「なんであんな言い方をしたんだろう」と思うこともある。


でも、感情は悪者ではない。


怒りは、何かが大切にされていないサインかもしれない。

怖さは、守りたいものがあるサインかもしれない。

悲しさは、失ったものや欲しかったものを教えてくれるサインかもしれない。


だから、感情を消そうとしなくていい。

感情の言いなりにもならなくていい。


必要なのは、感情の席を用意することだ。


「そこにいるのはわかった」

「何を伝えようとしているのか聞くよ」

「でも、誰かを攻撃する形ではなく、ちゃんと扱おう」


この態度を持てると、感情は少しずつ味方になる。



感情を抑え込んできた人は、まず感じていい。

感情に振り回されてきた人は、まず止まって見ていい。

どちらの場合も、目指す先は同じだと思う。


自分の感情に気づく。

その感情を理解する。

そして、相手を敵ではなく、協力できる人として扱う。


次女の「こわい」の奥には、「信じてもらえないかもしれない」という不安があった。

それに気づけたことで、

私は「自分で言いなさい」と押す前に、先生との関係をどう仲間の形に戻すかを考えられた。


感情を理解することは、行動を甘やかすことではない。

感情を理解することは、人をもう一度つなぎ直すための入口になる。


まず、アドレスする。

そこからなら、言葉は攻撃ではなく、橋になっていく。


いつでも言葉は私の気持ちを伝える橋渡しとして使いたい。




モノクロから虹色へ



 
 
 

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