許せない女

『怒っていてもね、怒っている本人に毒が溜まるばかりで

　実際に相手は何とも思っていないのよ。

　だから“許す”と言う事は、相手がした事に対してオッケにするという事ではなくて、

　その人との間でうまれた自分の毒を手放すという事よ』

そんな風に教えてくれた人が居た。

ヒーリングをしていると必ずどこかで『許す』という言葉が出て来ます。

英語で言うとForgivenessでしょうか。

確かに酷い事をされた場合、相手の事を許せないというケースは沢山あります。

今日お友達との電話の中で

自分の落ち度に対して相手に謝ったんだけど、

相手はなかなか、許してくれないという話。

『その許さない人、体調悪くない？』と聞くと

『うん、悪いよ〜』と返答がきた。

やっぱりそうかー

謝っても許さずに、ずっと不快を相手に示し続けることで相手への復讐をする人に

体調が悪い人は多い。

ふと思い出した

ある一人の女性のクライアントさんのお話です。

『いず美、来週からピラティスね一ヶ月お休みをもらうわ。』

『え？どうしたの？』

『私ね、手術があるのよ。鼻からねじが出て来ているのが分かるから。』

確かに彼女のカオは、整形をしていることが明らかに分かる程だった。

でも、美容整形にしてはちょっと違う感じだ。

『あのね、ある日多くの男性に取り囲まれて私の顔を鉄パイプで殴られたの。

　それもね、たくさんの男性にレイプをされた後に。

　翌朝、死ぬギリギリの所で発見されてね、私は一命を取り留めたわ。

　きっと私がまだ生きているなんて

　彼らは誰一人として思っていないんじゃないかしら？

　そこから色んな医者を転々とした。

　いっぱい考えたわ。

　どうして私がこんなめにあったのかしら？って。

　そして、ようやくジャパニーズの素晴らしい医者を見つけたのよ。

　彼のお陰で私の顔がまともになったと私は思っている。

　でもね、やっぱり鼻のねじが緩んじゃうのよね。

　だから定期的に、今もメンテナンスが必要なの。』

淡々と話す彼女を、どう受け止めていいのか分からなかった。

困惑したままで聞いている私に

『あのね、一つシークレットを教えてあげましょうか？』

そう言って、私の耳元に囁くように彼女はゆっくりと言いました。

『今の私の鼻のねじだけで済んでいるのはね、

　そのジャパニーズのDr.が言ったひと言だったのよ。

　私のカオはずっとどんな医者が手術をしても元に戻らなかったの。

　何回メスを入れたか分からないわ。

　そして、出会ったジャパニーズDr.にね

　”君が今まで遭った出来事を、全て許す事が出来る、

　もしくはそっちの方へ向かうつもりがあるなら僕は君の手術を引き受けるよ”

　って言われたのよ。

　もちろん、許すなんてとんでもないって思ったわ！

　でもね、彼が言ったの。

　”許せないと思う程、君のカオは歪んで来る。

　どんなに僕が治そうと思っても、ココロはカオに現れる。

　歪めば歪む程、君は過去に生きる様になる。

　僕の仕事は、君に未来において新しい世界で生きる為に整形をする事だ。

　新しい命で生き直す事を与えしようとしているのに

　君が過去で生きようとする限り、僕のミッションとは異なる。

　だから、君が今まであった事を許すように努力するのであれば、

　僕は新しい人生を代表するカオを君の為に尽くそうと思うよ。”

　そう言われてね。

　私の顔は、沢山の被害によってだけではなく、

　それに対する考え方や怒りで、歪み続けているんだって気づいたの。

　やった奴らじゃなくて、その被害を受けた私の顔がもっと歪むって、　

　酷い話だと思わない？

　だからね、私、そこから「許す」って言う事を選んでいる。

　許せない怒りってね、本当に自分のココロとカラダを蝕むのよね。』

”自分がこんな状態になっているのは、あなたのせいなんだよ。”

今になって自分を振り返ると、

そうやって怒りを表現し、そうやって無意識のうちに

リベンジをして来たのかと過去の自分の醜い部分を思い出す。

怒りが伝えられない人ほど、

怒りを伝えるなんて自分のプライドが許さないと思っている人程

この傾向は大きいのかもしれない。

そう言う人は、何年も前に自分がされた事をまだはっきりと鮮明に覚えている。

また

そう言う人は、何年も前に自分がしてしまった事もハッキリと覚えて

まだ、申し訳なく思っている。

単なる思い出としてではなく

苦虫をかみつぶす様な感覚で残っている。

それが自分のカラダを蝕むとは知らずに。

もう会っていないあのクライアントさんは、今どうしているのだろうか？

許す事が出来ないのは、本当にシンドイ。

電話で友人が話してくれた

怒ったまま無視をすることで友人に対して嫌な思いをさせているその人は

きっと、ずっと苦しいんだろうな。

モノクロから虹色へ