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心が離れて行く

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ここ数週間、アンドリューが週末に家を留守にすることが続いた。

週明けで帰ってきた彼は、その週末も出かけるため、仕事がバリバリに入っている。

二週間、一緒に夕ご飯を食べない時間が続いた。

初めの週末は、(一人で大丈夫か?!)と彼を見送った後に

プチパニックになったほどだったが

次の週末には、(なんでアンドリューばっかり出かけて!)と

プチ怒りになった。

漫然とした不満が漂う。

とても居心地が悪い。

釈然としない感覚が体を襲い、それが顔の表情に[仏頂面]という形で出る。

隠しきれない不満顔。

これが続いたら、

私の顔ってほうれい線にやられるんだろうなと予想がつくほどの不満顔だったと思う。

日曜日に帰ってきた、アンドリュー。

『チームミーティングを終えたらすぐに帰れるようにお願いをしたから

 夜7時には帰宅できると思う。一緒に夕飯を食べよう。』

その言葉を信じて、私は6時に夕ご飯を作り出した。

作り出してすぐに彼から連絡が入った。

『今終わったから、家に帰宅するのが8時になる』

赤ちゃんが寝る時間だ。

私の中で、じゃあ、先に赤ちゃんを寝かしつけてから一緒に夕飯を食べよう。

そう思うが、嫌な予感がする。

それを振り切るかのように、私はビーツを切り始めた。

その日の昼間は『今日は久しぶりに夕ご飯を一緒に食べるから、何を作ろうかな』って

お買い物に出かけてた。

前回ビーツのスープを作った時は、ゲロが出るほど不味かった。

それを料理のプロのせいちゃんに相談したら、ビーフと合うよと言ったのを思い出したから、買い物カゴの中にビーフのストックを入れた。

ジャガイモは彼の好きなユーコンにして、

人参も好きだから、人参も入れちゃおう。

そうやって買った食材が、まな板の前にあふれていた。

それらの食材を見ながら、自分の嫌な予感を打ち消した。

6時15分になり、彼から次のメッセージが入った。

『渋滞で、2時間半かかる』

8時半か。。。。

私の人参を切り方が雑になり、切った人参が床に落ち始めた。

一人遊びが最近できるようになった赤ちゃんの声が隣から聞こえる。

すると電話がかかってきた。

『ハニー、How are you ? 』

声の調子から、とても素敵な時間を過ごして

魂がるんるんしている感覚が伝わってくる。

それと反比例するかのように、

私のイライラは募って行くのが体感覚として感じられた。

それを気づかない彼はこう続いた。

『あのね、渋滞がひどい上に、ミーティングが終わってすぐに向かっているから

 夕飯を食べていないんだ。ちょっと僕、どこかに立ち寄ってご飯を食べてから

 帰っていいかな』

その言葉を聞きながら、ふと鍋に目をやると、

もう、お鍋の中にはビーフストックベースのビーツスープがヒタヒタという顔をして

私を見返してきている。

もう、パッケージにも戻せないし、

切ったビーツを元に戻すこともできない。

『えー、でも夕飯一緒に食べるって言ったから、作っていたのに』

そういうのが精一杯だった。

だって、渋滞は彼のせいではないし、ミーティングが長引くこともある。

お腹が空くのも当たり前の話だから。

でも、釈然としない感覚があった。

水を一杯飲んだら、その水が鉛のように胃の中に重く入った感じがした。

『できるだけ早く帰るよ』

そう言って、彼は電話を切った。

気づくと娘がハイハイをして私の足元にしがみついていた。

無感覚で目の前にある業務をこなすかのように、

ビーツのスープを作り終えることを目標にした。

味見をすると、劇まずだった。

なんでも帳消しにして、美味しくしてくれる魔法の粉と呼んでいる

茅野やのだしパックを出した。

一つ入れても、劇まずのままだった。

二ついれても、劇まずのままだった。

三つ入れようとしたけど、劇まずが変わらないのは予想ができた。

この魔法の粉で、私のイライラなかったことにしようとしたけど

それは無理な話だった。

イライラした私が作ったスープは、茅野やのだしですら打ち消すことができなかった。

娘を抱き上げ、「いただきます」と手を合わせて、夕ご飯として

鍋いっぱいのまずいスープを一口飲んだ。

やっぱりまずかった。

そして、私は二階に上がりお風呂の準備をして、彼女を寝かしつけた。

その間、ずっと私は釈然としないエネルギーを見にまとい

フェイクな笑顔で彼女との時間を過ごした。

いつになく娘が言葉数が少ないようにも感じられた。

彼女がおっぱいを飲みながら、私もいつのまにか寝落ちした。

遠くで家のガラージが開く音がした。

(帰ってきたのか)

そう思って、また眠りに落ちた。

その30分後に彼が二階に上がってきて、私の手にキスをしていた。

『ただいま、ハニー』

そういう甘いエネルギーの彼に、私はイラっとした。

でもなんて言っていいかわからなくて、私は眠たいふりをして、また瞼を閉じた。

言ってみれば、無視したのだ。

翌朝、目がさめると彼がニッコリとした甘い笑顔で私と赤ちゃんを見ていた。

『なによ』

そう言いたくなる、可愛くない私がいた。

その衝動をグッと抑えて私は言った。

『どうだった、週末。いい時間過ごせた?』

言いながら、私自身がいい人間を演じているのを感じた。

彼は、「すごいいい時間だったよ」と言った。

『でも、コンフィデンシャル(その場であったことを他言してはならない)

だからシェアできないけど』

と言いながら彼がワークショップを思い出す表情は満たされていた。

『そう。。。。』

その表情を横目でしっかりと見ながら、私はまた不快感に襲われているのを感じた。

不満顔にならないようにしようとすると、表情が『無』になっていく。

一日中、私の声は

『ふーん』

『あ、そう』

『それやめて』

『これしといて』

そんな言葉ばかりを発していた。

無でありながら、水面下にはびこる不満にもう耐えきれなくなった夕方。

私は話すことにした。

『ねえ、アンドリュー話があるんだけど。』

『ああ、いいよ』

そういうアンドリューに対して

『あのね、この二週間の週末、アンドリューいなかったでしょ?

 私ね、すごい大変だったの。一人で赤ちゃんの面倒を一日中見て。

 だからって、あなたにワークショップに行くなと言いたいわけじゃない。

 男性が仕事以外の自分のパッションを持つ時間って大切だっていうのは

 十分わかっているし、あなたがしていることは社会貢献だと思う。

 でもね、女は8時間以上家に一人でいたら男性性が勝るの。

 だから、今日の会話って、お互いにビジネストークって感じで

 全然楽しくなかった。

 あなたのやり方に不満が出てくるし、

 あなたも私のやり方にいちいち口うるさいって感じるし。 

 二週間も週末、私たちのこと忘れてさ、

 あなたは私の生活をほぼ占めているけど、

 私たちは、あなたの生活の一部でしかないのかって感じる。』

不満を抑えながら、極めて冷静に論理的に伝えようとするが

自分の舌ベロがねっとりと、

「こう言うことを言いたいんじゃない」

という思いと共に絡みつく感じがした。

『じゃあ、いず美もヘルプがもらえるようにベイビーシッターを雇おうよ。』

『別に私は赤ちゃんを置いて、どこかにいきたいわけじゃないの。』

『じゃあ、いず美が女性性に戻れるように、二人っきりでデートしよう』

『別に私は赤ちゃんを置いて、どこかに二人っきりになりたいわけじゃないんだってば!』

『じゃあ、どうしたら僕は君をハッピーにできる?』

『それが分からないから、困っているのよ。

 何に不満を感じているのかまだ分からないの』

『じゃあ、I don't know 』

そう言われて、話が終わった。

匙を投げ出された気分。

こうやって、相手は何も私のことをわかってくれない!

と言って、相手に失望をして、赤ちゃんだけに集中して、

そして、相手と距離ができて、多くのカップルって心が離れて行くんだ。

そう感じた瞬間だった。

いいのか、いず美!!!

続く

モノクロから虹色へ

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