Dr.との面会
新しいDr.との面会の朝、私は朝からイライラしていました。
なにかにつけてアンドリューに文句を言い、イチイチケチをつけていました。
普段だったらどうでも良い事を口うるさく言う私に、
何も影響を受けていない様に見える彼。
そして、
『私の事がそんなに好きじゃないんでしょ』といちゃもんをつける私を
なだめようと近寄って来るけど、
『ふん』と言いながら
私は、マタニティヨガを1人でプンプンしながら受けにいきました。
このままじゃあ、ヤバいなあと想いつつ。
何に対してこんなにイライラしているのか分からない。
普段だったら、自分を振り返り「どうしたの?」と心に聞けるけど、
そんな心境ではないほどイライラしている。
心が重たくて重たくて、
アンドリューに距離を置いている自分がいて、
「もう私達ダメかもしれない。。。。」などと
何もないのに、思い始めるほど脳内の被害妄想が酷くなっている。
14時になって、Dr.のオフィスに到着。
そのイライラのせいで私はアンドリューとは別の車で
1人でDr.のオフィスに向かったほど。
すでにオフィスで待っていたアンドリューをみて、またイライラしている。
喧嘩をふっかけたい私。
それに応じないアンドリュー。応じないと言うか気付いていないのか。
ただ、オフィスに入った瞬間から、ヒップなオフィスに私は正直驚いた。
受付の女性も、パンクな格好をしている。モヒカンに全身タトゥ。
Free Spiritって感じで、とても明るく優しい雰囲気。
だからと言ってピンク一色ッて言う感じではなく、ヒップなオフィス。
音楽もクラッシックとかではなく、最近のポップが流れている。
働いている人が楽しそう。
今までの病院のイメージという感じとは全く異なる事に喜びを感じながらも、
別の不安を覚え、アンドリューに
『ここって本当にアンドリューの働いている病院の一部よね?
保険、ちゃんと効くよね?』
と確認したほど。
そして、自分の順番を待つ間に、アンドリューが手にした本がとても素敵だった。
有名なハリウッドの女優達が水中でのマタニティの写真集だった。
おっぱいを出して、赤ちゃんにあげている様子は美しく、
それを見て私はぽろぽろと泣いた。
さっきまでイライラしていたくせに今度は、もう泣けてしまう。
なんなんだ。
診察室に通されて、アンドリューと2人っきりになった時
アンドリューは
『今回は自分の想いをまっすぐに伝える事を僕はサポートするよ。
自分がしたい事をDr.に伝える事って君にとってエンパワリングだと思うんだ』
そう言った。
ダメだ、涙が止まらない。
Dr.が来る前に、涙を止めたいけど止まらない。
何の涙か分からなかった。
そして、Dr.が入って来た。ギリシャ出身の大柄な落ちついた男性だった。
『やあやあ!どうよ!』
そう言って入って来る彼に頼もしさを覚えていると
『君の事を先ずは教えてくれよ。君の事を知りたいんだ』
そう言った。
喉を詰まらせたが、あふれる涙が止まらず
『私、ちょっと今日はイモーショナルで。。。。言葉が出てこないの』
そう言うと、Dr.は
『もちろん、イモーショナルな事だよね。
イモーショナルになれるって素敵な事だよ。とても美しいと思う。
だから、良いよそのままで。涙も流しっぱなしで大丈夫だよ。』
優しくなだめるというよりも、
感情に対して共感すると言う感じの彼にホッとした。
彼は私と同じソウルでありライクマインドだ。。。。と。
喉が震えて上手に話せない私の代わりに
アンドリューが前回のドクターとの経緯を話してくれた。
高齢出産の事、
40週で陣痛促進剤を打つとインフォームされたこと、
そして胎盤の位置の事。
それらを聞いて、Dr.は
『僕の患者の半数以上は、40歳以降だ。
僕はなんにも心配していない。
今の20代よりも40代で出産する人の方が健康な人が多いしね。
年齢なんて僕にとったら、ただの数字でしかない。
ただ、僕は注意を払いたいのは、胎盤の位置だけだな。』
そう言って、胎盤についての絵を書いてくれた。
『すばらしい絵の才能があれば良かったんだけど、、、、』
と言いながら描いた絵は、3歳の幼稚園児が描きそうなものだったが、
その優しさが私にはとても嬉しかった。
『でもね、膣から産みたいのは分かる。
だから、一週間ずつモニタリングをしていけばいいよ。
少しずつでも胎盤が動いていたら可能性はあるのだから。
36週で少し動いて、37週で少し動いて、
38週で少し動いてって見ていけば良い。
そう言えば、この間は
38週で2.1㌢になった人に僕はよし自然分娩で行こう!って
いって彼女は自然分娩を望み通りにしたよ。』
そんな彼の言葉を聞きながら、
こんな風に、寄り添ってくれるDr.がいたのか。。。
と呼吸がゆっくりとしていくのがわかった。
『でも、君達は、自宅出産を望んでいるんだろう?
僕だって、自分の子を3人とも自宅出産したからね。その気持ちは良く分かるよ。
だから、今の僕の望みは君達と金輪際、会う必要がないことだ。
もしも、会う事があるのであれば、どこかのショッピングセンターで
君達が美しい赤ちゃんをカートに乗せて、あら!!元気!って出くわす事だね。』
こんな風に自宅出産をサポートするDr.っているんだ。。。。
お産ビジネスという話は良く聞いていたが
彼にとってお産はビジネスとして扱っていない感じだった。
不必要な事はしない。
不必要な予想もしない。
全てはカラダが知っている。それをサポートするだけ。
そこで私は彼に聞いた。
『あのね、万が一手術をする事になった場合、
それは神の意図として捉えるわ。そこに覚悟もする。
そんな中でも私の一番の願いは、
私は赤ちゃんと愛の空間でつながりながら、出産をしたいと思っているの。
ただ、現時点で私の中の想像では帝王切開は「恐怖」でしかない。
その恐怖はね、私のパワーを失うことに恐怖なの。
私たちの赤ちゃんなのに、
私の知らないうちに誰かに取り上げられて、
私は自分で産んだッて言う感覚がないまま
進んでしまう事は、私の意志ではないの。
愛の空間で愛を感じながら、出産する事ってあなたの元では、可能かしら?』
そう聞くと、
『勿論だよ。どんな出産方法であれ、僕は産む母親が赤ちゃんと繋がれる様に、
私が産んだと感じられる様にエンパワリングする。
大丈夫だよ。絶対に愛の中で出産をするから。
でもね、まだまだ君がそんな事を考える必要なんて一切ないんだ。
本当に万が一の話であって、胎盤が動く事がほとんどだからね。
だから、そんな事を今、考えなくて良いんだよ。』
「愛の空間」
そんな言葉をメディカルのDr.が理解してくれるなんて思ってもいなかった。
私が、『神の意図』と言った時、感覚でドクターが頷くのが分かった。
この人も、私と一緒の考えてお産に対して臨んでくれている。
そして、君をエンパワリングすると言ってくれたとき
アンドリューが私の手をギュッと握り、私たちは、見つめ合った。
泣けてきて、泣けて来て、ありがとうございますって、頭を下げた。
『来週の超音波のスペシャリストでの結果を一応報告してくれるかな。
金輪際会うことがないことを願っているけどね。』
そう言って彼は去った。
お腹の赤ちゃんの鼓動も聞いて『パーフェクト』と言う彼。
まだまだ手術なんて考えなくていいと言う彼。
万が一になっても、愛の空間で君をエンパワリングすると言う彼。
彼から発する全ての言葉が、全部ポジティブだった。
私が欲しい言葉をくれる人だった。
私が望んでいる愛の中で出産をしようと言ってくれた。
彼が診察室から出て行った後、泣いた。
前回の女医が出て行った時の涙とは違った。
心から『神様、ありがとう』そう言ってアンドリューの腕の中で泣いた。
どんな方向に進んでも、私は満足が行くお産になると確信した。
胎盤の位置は、神様と赤ちゃんに任せる。
どこでお産か、とか、どんな方法でお産か、ではなく
どんな空間と気持ちでお産に向かうのか、、、、それが一番大切なんだって分かった。
安心して、身を委ねられる空間。
Feeling goodの空間を整えると言う私がやるべきことはできたから、
きっとDoing good出来るようになるはず。
私は、本当に愛のある人に囲まれているなあと、感謝でいっぱいである。
もしも、少しでも違うと感じたら、愛を感じる人の所をまた探せば良いだけの事だ。
そして、愛のある人と一緒にいると、彼らの人への接し方を真似したいと思う。
こんな風に私も人の話を聞き、人をサポートし、人を受け入れたいなと。
さっきまでの、イライラはもう微塵もない。
きっと、今回のDr.に期待はしていたものの、
何か言われたらどうしようと身構えていたんだ。。。。。
前回のドクターにも胸を膨らませて会いに行ってクラッシュしていたから。
まだまだ、私は過去の経験に生きていたんだと実感した。
それでも、今、
安心を与えてもらって、私はホッとしてそのイライラはどこかへ飛んでしまった。
その代わり、希望で一杯である。
どんな出産でも、私は大丈夫。
やっぱりアンドリューと一緒で良かったって心から思う。
完全なる八つ当たりであることに、猛烈に反省である。
ごめん、アンドリュー。
そして、ありがとう、アンドリュー。
赤ちゃんが驚くほど、右へ左へと蛇行運転するように動いている。
私の安心ホルモンが届いたのかなと思う帰り道。
モノクロから虹色へ