心と体が繋がるピラティス





一人の女性。

昨年から断続的にレッスンに来る彼女。


話をするけど、いつもスルリとかわす彼女。

本質を突かれそうになると、「じゃ」と言って帰る彼女。


彼女の足も手もクリームパンみたいパンパンで

足の指でジャンケンをすることができないと言っていた。


お友達がたくさんいて、とっても社交的。

でも、スルリと交わすのが得意な彼女。


毎回ピラティスのレッスンに来るたびに、彼女の体がつながったかと思うと

それを維持することを放棄しているかのように見えた。


真剣になってやれば、すごく繋がって強い体が作れるのに


そう思って彼女に伝えると

「昔、部活でソフトボールの監督にそれを言われて、嫌でやめたんです」と。


彼女は、一般の人が求めているところへ向かいたいわけじゃないようだった。


どこに向かいたいのか、彼女の言葉と私が見る彼女の体、そして行動のギャップに違和感を覚えながら

私は、彼女が来るたびに真剣に彼女の体と向き合った。


彼女の体がきっと何か伝えてくれるはずだから。


たくさん食べ、たくさんお酒を飲み、たくさんタバコを吸う。

それでも、彼女は片道約2時間かけて私のところにやってくる。


きっと彼女はただ体を強くしたいだけじゃない。

何か絶対にあるのだと、私は転機を待った。


今年に入って、週に2回行きますと言ってくれた。

自暴自棄な彼女、するりと交わす彼女、期待されたくない彼女。


でも往復4時間かけてくる彼女。


私は、その日、レッスン前に話しかけた。


彼女の過去について。


それなりに彼女は今までもポロリポロリと自分の過去の話はしてくれた。

少しずつ、私は質問を投げてきたが、

今日は彼女とちょっとしっかり話してみたいと思って話し始めた。


少しずつ彼女の中にも準備ができてきたのか

真髄に近づいた時「なんか頭が痛いっす」と言い始めた。


わかる。


本当に欲しいものを、欲しいと言えずにずっといる時。

欲しいことすら、自分で気付きたくないし、認めたくない時。


スルリと交わし、自暴自棄になってその欲求から離れる。


私は、彼女に質問を残したまま、セッションに入った。

彼女の中でプロセスが起きているのは、体の動きを見てわかった。


たれパンダのような体が少しずつ、統制し始めている。

バラバラになっていたものが一つになりつつある。


「骨で動かさない。こことここの筋肉をつなげて。」


そう体を触って教えていく。

彼女の体が素直に私の指示を捉えていく。

何かわからないけど、きっと何か変わっているんだろうと私は静かに彼女を見ていた。


そして、彼女が腕立て伏せのポーズに入った時、

彼女の体がピシッとハマった。

きつかっただろう。でも、とても美しく凛とした線に私は感動した。


Beautiful!


I am so proud of you!!


終わった瞬間に、そう彼女に言った。

そして、彼女を見ると正座をして、床に手をつき体を震わせて泣いていた。


小刻みに震えている彼女の背中を私はそっと手をおいた。

小さな子供が泣いているようだった。


私は待った。彼女のプロセスが終わるのを。

そして、彼女が顔を上げた時、その美しい瞳が私の目をしっかりと捉えた。


「わかったんです。

 このエクササイズ、実際にきつかったんです。

 でも、やった時に、いずみさんが言ってくれた言葉がすごく嬉しかった。

 小さなことだけど、私はこうやって褒めてもらったことがなかった。

 だから、大きなことをやらないと認めてもらえない、褒めてもらいないって、思ってた」


私の目を真っ直ぐに見れた彼女に

子供のように無邪気に喜ぶ彼女に

ずっとずっと言われたかった言葉をもらえて安心している彼女に

私はとっても心が震えた。


そんな

とても可愛らしい彼女が「あああ!なんか足が違う!」と言い始めた。


レッスンが終わってから、

「ジャンケンのパーなんて出来たことがない」と言いながら

足の指を開こうとした。