バチか、祝福か
日本は暑かったかといえば、すごく暑かった気がする。
長女は熱に弱く、少し熱中症気味になっていた。
実家に戻ると、驚くほど蚊に食われて身体中がボコボコしていた。
私の実家の近くに箱根の山がある。
そこを登ると、山頂から富士山を眺めることが出来る。
私たちは、箱根のくねくね道を通り、駐車場に車を停めた。
日本は神秘的な国だと思う。
たくさんの観光客が賑わう日本で、ここはひっそりとほぼ知る人ぞ知る山道だった。
すれ違う時は、日本語しか聞こえない。
山奥に入っていくと、高い木々に囲まれて風はヒンヤリとしていた。
38度ぐらいの日だったが、多分体感温度は28℃ぐらいだったと思う。
気持ちよかった。
暑さにぐったりしていた長女は、陽気に歩き始めた。
この山には、精霊がいるのではないかと思うほど、体は軽く山を登り始めた。
途中で、石が積んであった。
恐山で見るようなやつだ。
山道にある葉っぱを拾ったり、熊の足跡じゃないか?と話したり、寄り道をする娘たちは
もちろん、その積んである石も触り始めた。
「ちょっと、誰かが積んで願いとかかけてるかもしれないから、触らないでおいた方がいい」
そう言ったが、
そんな日本語は知らない。
「念」という言葉を私はいつの頃に学んだんだろう?
多分夏の夜の、稲川淳二の怖い話とかで学んだのかもしれない。
「念」という言葉を英語にどうしたらいいのかも知らない。
とにかく誰かにとって大事なものだからやめておけと
石を崩してしまった子供たちの手を引っ張り歩き始めた。
大丈夫だろうか、と気にかけながら歩いたその時、
ざあああああああああああああああー
と大雨が降り出した。
大粒の雨が体に差し込むかのように当たってくる。
私は、思わず『ほら、言ったこっちゃない!!!!バチが当たったんだあ!』
と、叫んだ。
4名中3名は、意味を全くわかっていない。
もおおおおおーーーー!!
走れーーーー!!!
下山するぞ!!!
と、私1人で怖がりながら、滑りそうな山道を下山した。
大粒の雨に娘たちは、きゃっきゃ、騒いでいる。
そして、両手を広げて空を仰いで、全身で雨を受け取っている。
私は木の下で雨宿りをしながら、横目で、まだ、あの石を崩したからバチが当たったんだと、思ってみていた。
でも、次第に彼女たちの大きな笑い声とはしゃぎ声につられて
私は、バチって何よ?と思うようになってきた。
そこに、もう1人のこの私の気持ちを理解していないアメ人である夫が
「Beautiful, huh? 」
と言ってきた。
本当に自分がどう受け取るかだけだ。
彼女たちの笑い声に身を潜めたら、なんか、祝福されている気がした。
さっきまで、バチが当たったと言ってたくせに。
状況は自分次第で、どうとでも取れる。
その時、私は、祝福だと捉える方を選択したいと思った。
いよいよ雷が落ちそうな勢いだったので、みんなで車まで走った。
車に入ってからも、子供たちは「すごいアドベンチャーだったね!」と意気揚々としていた。
雨と一緒に、私の中のいろんなものが流された感がある。
さっきまでバチだと言ってたくせに。
夫も、「こんな経験できて、面白かったな!」と笑顔で私に言った。
実家で色々あった今回の旅だった。でも、私たち家族は、みんな、守られているって思うことにした。
感情はいつでも選べる。
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東京はあと数名です!
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